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暴力脱獄 特別版

9・30のTBSラジオストリーム(9・30.2008)。
米国在住・映画評論家の町山智浩さん の解説が素晴らしかった。

先週土曜日に亡くなったポールニューマンについてのトークなんですが、
あまりによかったので、書き起こし、記しておきます。

映画「暴力脱獄」の深い意味合いがとてもよく分ります。

以下、町山智浩さんが語ります。

~~~~~

★ポールニューマンの死・アメリカでの報道

ポールニューマンが亡くなったことがアメリカのテレビで報道されたとき、殆どのテレビ局で流されたのは「暴力脱獄」のラストシーンなんです。この映画はジョージケネディがアカデミー助演男優賞を受賞した作品で、その中で彼が、ポールニューマンの役のルークを思い出しながら「あいつは笑ってたよ。いつだって笑ってたんだ」という台詞を言うんです。そうするとポールニューマンの笑顔が次々とフラシュバックし映し出されるんです。それはそれはもう涙が止まらない世界でした。


★ポールニューマンの最高傑作とは

ポールニューマンの映画で「ハスラー」とか色々でてますけど、最高傑作っていうのはこの「暴力脱獄」なんです。この映画に比べたら「スティング」「明日に向かって撃て」なんてゴミみたいなもんですよ。それくらい素晴らしいんです。もし一生に一本映画を見なくてはならないとしたらこの「暴力脱獄」だけみればいいです。

「暴力脱獄」は、その邦題とは違い暴力的な映画などではなくって、刑務所の中の映画ってだけなんです。脱獄を試みては失敗を繰り返す男の話です。原題は「cool hand luke」で、handはトランプのポーカーやるときの「手」という意味で、要は「最高の手」という題です。


★「暴力脱獄」について


・あらすじ

ポールニューマン演じるルークという主人公が、パーキングメーターを壊したという些細な罪でフロリダの厳しい刑務所に入ってくるんです。で、ルークの態度がヘラヘラとしてることで、刑務所でのボス・牢名主のジョージケネディや看守たちに目をつけられてしまうんです。そしてその牢名主にルークはポコボコにやられてしまうんです。だけど何度殴って倒してもルークは立ち上がってくるんです。

殴り倒してもヘラヘラと笑いながら、殆ど死んだ状態でも立ち上がってくるんで、最後には殴ってる牢名主のほうが怖くなって音をあげて負けてしまうんです。それで、おまえ凄いやつだってことになって、牢名主がルークのことを好きになってしまうです。

そんなルークのことを他の囚人たちもだんだん好きになっていくんです。これは日本で同時期に発表された漫画「あしたのジョー」にそっくりなんです。だからルークをあしたのジョーに見立ててみてみると分りやすいです。

それで、刑務所は罪を償うところで笑っちゃいけないところなのに、彼につられてみんなが楽しく笑うようになっていくんです。囚人を苦しめようとする労役である強制労働でさえ、ルークが「面白いじゃないか、競争しようぜ」といって楽しくやってしまうんです。囚人を苦しませようとする看守たちの思惑に反して、喜んで楽しそうに終わらせてしまうんです。だからコノヤローってなるわけです。

・みどころ

この映画が面白いところ、最高のクライマックスシーンというのが、ゆで卵を食べるシーンなんです。アクションとか決闘じゃないんです。ルークが突然「ゆで卵50個たべれるぜ」と大口を叩くんです。どうみたって食べられっこないんです。実際医学的にも無理な数でなんですが、「それじゃ賭けるか」ってなって、ルークはゆで卵を食べ始めるんです。

何個も食べ続けるんですが、もう殆ど不可能で、だめになっていく。それでも食べ続けるんです。そうするとだんだん皆があつまって応援しだして、囚人達も一緒にモグモグして、噛み始めるんです。口になにもはいってないですけど。これでルークと心がひとつになっていくんです。この卵をたべるというシーンで、何にもない打ちひしがれている囚人たちに意味のない希望を与えてしまうんです。

・アメリカ唯一の実存主義の映画

実はこれは凄い深い映画で、アメリカで殆ど唯一の実存主義の映画だといわれているんです。それは刑務所自体を「人生」と見立てている映画だからなんです。ポールニューマンが台詞の中でこう言うんです。

「刑務所の中も外も同じだよ、だから俺はここへ来たんだ。なんだかよくわかんない人が威張っていて、そいつらは金持ちになっていて、わけのわからないルールで縛って、皆はそれにしたがって生きているだろう。意味もないのに。そんなのまったく意味ないだろう。でも、楽しく生きなきゃ、負けたことになるだろ。人生が大変だなんて苦しんだら、負けになっちゃう。だったら笑顔でいようぜ。」というわけです。

で、なぜルークがそんなことを言う男になったかっていうと、彼は戦争でもの凄い酷い目にあったんですね。自分は戦場で人を殺したし、人が人を殺す所を見て、完全に人間に絶望したんですよ。それから現実社会のアメリカに帰ってきたら、アメリカ社会の金とか出世とか権威とか、そういったものがバカバカしく見えたんです。人間の本当の真実を見てしまったために。

それから、もうそんな社会はバカだ、笑うしかないと、笑い始めたんですよ。ニヒリストですね。虚無なんです。世の中のものに何も価値を見出せない。彼がなぜ殴られても蹴られても、笑って平気かっていうと、自分の命すら大事に思えなくなってしまっていたんです。

これはコリンウィルソンの書いたアウトサイダーという哲学本があるんですけど、その典型的な例なんです。現実社会の価値観に意味を見出せなくなってしまった男なんです。

ただ、彼がそういったヘンなことをすればするほど、囚人たちがどんどん元気になっていくんです。怖いものないから、失うものはないから、ポーカーでもなんにもない手なのに勝とうとする(cool hand)んだけど、彼は「何にもないほうが一番強いんだよ」というんです。そんな彼の考えに囚人たちは勇気付けられて、だんだん囚人たちに笑顔が戻ってくるわけです。

ところがそれは看守達に絶対許せないことなんです。この映画の中で、看守というのは唯の看守を意味しているわけではなく、世の中の権威とか権力とかルールやきまりごとを意味してるんです。社会といいうものは、人間を屈服させてルールに従わせること、ルールの奴隷にすることが目的なんであって、その奴隷にならないやつは、本当に許せないわけです。

・ルークとは何者か

で、結局ルークは最後犠牲になっちゃうんですよ。つまりルークっていうのはキリストなんです。卵を沢山食べてヘタって両手を広げて裸で倒れるシーンがありますけど、そのときもキリストが十字架にかけられるシーンのように倒れるんです。ルークという名は聖書のルカという使徒から名前をとっているんですけども、ルークはあきらかにキリストなんです。

ルークは天の神様に向かっていうんです。この世の中になにも価値を見出せないし、なにも信じられない。けれども、本当の生きる意味があるとしたなら、神様が教えてくれるに違いないだろうと、「俺に教えてくれ!何のために生きるか教えてくれ!」
・・・・でも答えなんかないですよ。

実存主義っていうのはヨーロッパで生まれた哲学ですけども、神様がいないってことがだんだんわかってきたんですね。ヨーロッパで。近代になって。天国もないと。じゃ、今まで神様に従って生きればいいと思っていたけど、神様がいないなら俺達は何のために生きているんだろう。それが実存主義の哲学になったわけです。

でもアメリカの場合、キリストの存在が強いので実存主義って生まれなかったんですよ。全員が神様いるって信じて、神様のいうとおりに生きればいいって信じていたから。この映画では神様に何度も訴えかけるけど、なんにも答えないわけです。だからこれがアメリカ唯一の実存主義の映画だって言われているんです。でもそのなかでどうやって生きるかってことを探ろうとする(ルークの)物語なわけです。

・この映画の言いたかったこと

この映画でルークは最後まで世の中に(神に対してでさえ)屈服しない。この映画のラストは囚人たちがルークのことを思い出すシーンで終わるんです。それは最初にいった「あいつは笑ってたよ。いつだって笑ってたんだ」という場面なんです。

それによってわかるのはルークっていうのは自分の生きる意味を見つけらなかったけど、生きる意味があったんですね。それは最後まで闘い続けて絶対に負けないで笑顔を忘れなかった。だからその笑顔が他の人たちの心に永遠に残るんです。それで他の人たちは、この厳しい社会でも生きていけると思うようになった。

彼はみんなに勇気や希望を与えるために生きてきたんです。まさにキリストなんです。ですから神を否定しながらも、それをさらに超えた人間の意味まで語ってる映画がこの「暴力脱獄」なんです。

ポールニューマンはユダヤ人でキリスト教を信じてはいないんです。これは神がいるって言っている映画ではないんです。神がいないなら君達がキリストになればいいじゃないか。キリストのように生きてみろ。くだらないルールに従うな。そういうことを訴えてる映画なんですよ。本当の正しいものを自分で捜せということなんです。

TBSラジオストリーム・町山智浩・コラムの花道より (9・30.2008)。

この話はココで聞けます

~~~~~~

というわけで。
町山氏の解説・解釈に感動してしまいました。
だって自分が見たときの感想は、ポールニューマンの魅力たっぷりな
映画ではあるけど、ここまで深い映画と読み取れなかったですから。
まあDVDもう一回見直すことにします(笑)

たしかポールニューマン自身がアナーキストだし、何百億もの寄付を
したりしてで自分を捨ててキリストのように生きていたのかも・・・。

見てない人はとにかく見てください。


DVD「暴力脱獄・特別版」では日本語吹き替えもあるほか
メイキング;コメンタリー付でさらに深く考察できるようになっています。
よかったら買ってみてくださいなー♪

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