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止まっていた時計が今動き出した

かなり前の出来事になるが、
ボクが二十代の頃、付き合っていた女性がいた。
一年ぐらいつきあって、一時は結婚も考えたが、
結局は別れることになった。

最後に会った場所はあるホテルのラウンジ。
ボクはバカで、まだガキだったから、
相手がさらに年下だったのをいいことに、
詭弁だらけの別れ話を切り出した。

「別に覚めたわけじゃない」
「お互いのためにも別れたほうがいい」
「好きだからこそ、別々の道を進む勇気ってあるはずだ」
・・等々。

愚にもつかない例え話なども持ち出して、
要は別れたいという内容の話をした。
終始そんなきれいごとで逃げようとしていた。

相手を傷つけないためにも上手な別れ話をしなければならない。
話をしているうちに、いつしか自信過剰になっていた。

ボクは本当は相手のことはどうでもよく、
ただ心変わりした自分の後ろめたさをごまかすことと、
巧みに女を翻弄する快楽に溺れて、
プレイボーイ気取りで、恋のゲームの幕引きをおろす心境だった。

相手の女性もそんなボクの話にも真剣に耳を傾けてくれ、
「そうだと思う」「私もそう思った」とこちらの話に同意してくる。
(ああ、よかった。これで相手も傷つかず、巧く別れられる。
オレのセリフもなかなか堂にいっているな)などと、
ずるい気持ちでほくそ笑んでいた。

予定のセリフを演じ終え、それじゃここでね、
とラウンジを出て、右と左に分かれた瞬間、
光線の具合で初めてそこで彼女が涙ぐんでいるのが分かった。

「じゃあね、元気でね」と精一杯明るく手を振りながら、
彼女は最後にこう言った。

「今日いったこと、私だから大丈夫だけど、
今度つき合って別れる人がいたら、
絶対、ああいうこといっちゃダメだよ」

ボクは強烈なショックを受け、彼女を直視できなかった。


全部見抜かれていたのだ。

ボクの嘘を、ボクの計算を、ボクのいやらしさを、
彼女はすべて見抜いた上で、さりげなく話をあわせてくれて、
非難めいた態度をこれっぽっち見せず、きれいに別れたのだ。

ボクはガツーンときて、すごいショックだった。
彼女は、いわば被害者である立場でありながら、
それでも最後まで相手を気遣うことを忘れない人だった。
今も彼女のその一言に深く感謝している。


(古館伊知郎のエッセイより)




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