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わたしは結婚してから十五年たつ。
わたしたち夫婦にも隙間風が吹き始めたことがあった。
二人の子供に手がかからなくなり、
上の子が小学生になったころのことである。

妻が多摩の小学校に異動となり、車で通うようになって、
子供の保育園の送り迎えを彼女がするようになった。
おかげで、わたしは送り迎えをやらなくてよくなった。

保育園の送り迎えというのは、朝、夕と時間が束縛され
何をするにでもやりようがない。
それから解放されたわたしは思わずホッと息をついた。

職場からの帰り道に本屋に寄ったり、人にあったりした。
なぜかそのときは、妻は保育園の送り迎えや買い物を
しているのだということは、頭から抜け落ちていた。
解放されたという気持ちだけがリアルだった。

わたしが解放感にひたっていたのも三ヶ月ぐらいだった。
妻の起こした自動車事故が発端だった。
自動車事故といってもガードレールに接触して
保険の請求をする程度のものだったのだが、
妻は「どこだったのか覚えていない」というのである。
妻は本当に覚えてないようだった。
それが何か変だなという始まりだった。

二学期に入ると、妻はみるみる元気を無くして行った。
家と学校を往復するだけで何もしない。
しゃべらないし、化粧もしない。
家でボーっとしているだけである。顔色もひどく悪い。
ちょうど田舎から母が上京してきて、
「H子さんおかしいよ。どこか悪いんじゃないの」と言う。

わたしは自分が解放感にひったっている間に、
妻には大変な負担がかかってこうなってしまったと考えると、
妻が可哀相で痛ましくてならなかった。

それでまず下の子の通っている保育園を家の近くに変えて、
わたしが自転車で送り迎えすることにした。
家事や雑事はできるだけわたしがやるようにした。
妻の負担を軽くしてあげて、わたしは彼女に絶えず話し掛けた。

「ぼくは、あなたのことを愛している。本当に愛しているんだよ」
彼女が病気の間、これしか言わなかった。

妻は次第に良くなっていった。
治っていく途中で彼女は言った。
「あなたのことなんて、どうでもいいと思った。
でも、そうじゃないってことがわかったわ」

わたしは改めて自分が解放感にひたっていた時、
妻がどんな思いをしていたか知った。
わたしはその時、本当に妻をいとおしいと思った。

わたしたちはまた愛し合える夫婦になった。
愛するというより、お互いを想い合えるようになった、
というのが正確かもしれない。妻は数ヶ月ですっかり元気になった。

この時は大変な思いをしたけれど、
逆に妻の変調がわたしたちの愛を回復させてくれたともいえる。
あのままのほほんと解放感にひたって、
なにもせずにいたら、妻はわたしのことを
「どうでもいい」と思うだけでなく、憎み始めたかもしれない。

相手のことを想い合わなければ
夫婦というこころの絆はほどけてしまうのだと思った。



梅香彰「哲学の本」から





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