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150 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 16:44:29.38
俺が小学3、4年で夏休みの話。

今の今までマジで忘れてた。

小学校の夏休みとか、遊びまくった覚えしかない。
近所の男子と、夏休み中開放されていた学校の校庭で
午後1時から体力づくりの名のもと、毎日のように遊んでた。

んで、 大体、午後5時くらいになって解散して、
帰りに50円のアイスを、商店街のとある店で買って食べてた。

アイスを食べる場所は、あまり使われていない駐車場だった。
その駐車場は、5時を過ぎるとアイスを食べて
雑談している汗だらけの小学生でいっぱいだった。

駐車場のすぐ隣には、バス停と公衆電話があった。


151 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 16:49:28.10
夏休みが始まってちょっと経ってからだったと思う。
いつも通り、駐車場でみんなでアイスを食べていて、
バス停に目をやると、 中学生ぐらいの女の子がいた。

目は大きい二重で、髪は肩ぐらいの黒髪で、
背は150cmあるかないかだったと思う。
背は小さかったけど、小学生の自分たちから見ると
ちょっと大人な感じがした。

その女の子は、商店街にある時計台と
バス停に書いてある時刻表をせわしく見ていた。
「誰かを待っちょるんかなぁ」と、その時は思っただけだった。


152 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 16:55:33.40
次の日、例の如くアイスを買いに行ったら、またあの女の子がいた。
相変わらず、時計台とバス停の時刻表をせわしく見ていた。

「恋人でも待っちょるんかなぁ」

と他人事のように思って、その恋人とやらが気になった。
しかし、家の門限が6時半までなので、そう長くは駐車場におれず、
いつも6時ぐらいには駐車場でみんなは解散していた。

その女の子は、6時になっても、時計台とバス停をせわしく見ていた。


153 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 16:59:48.14
その次の日。 特別暑かった日だった。
友達が2人ぐらい倒れたと思う。

学校にいた事務の先生が
「今日は暑いけん、さっさと帰りんさい」
と言って、3時ぐらいに早くも家に帰されることになった。

友達数名と、アイスを買いに行ったら、
また、バス停にあの女の子がいた。
時計台とバス停の時刻表をせわしく見ながら。

さすがに友達も女の子が気にかかり、
「昨日もおらんやったっけ?(いなかったっけ?)」
と口にした。

「ああ、いたね」
と、適当に返事をしたと思うが、
この女の子は3時から待っていて、
俺らが家に帰る6時以降もここにいるのか、
と気付いて、すごく衝撃的だった。

この暑い中、
誰を待ってるんだろう。
ガキながら、めちゃくちゃ気になっていた。


154 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:03:52.38
そして、いつも通りの日が続いて、
日曜日になった。

日曜日は、学校が開放されていないので、
みんなは家で遊ぶか暇を弄ぶぐらいだった。
俺はあの女の子が、何時からバス停にいるのだろう、と
好奇心で、11時ぐらいにバス停へ向かった。

さすがにこの時間にはあの女の子はいなかった。

しばらく待っていよう、と
持ってきたお金でアイスは何個か買って、
駐車場に座って待っていた。


155 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:08:17.47
1時になるかならないかぐらいだった思う。
あの女の子がやって来た。
その足どりはとても不安定で、今にも転びそうなほど弱弱しかった。

また、この暑い中、誰かを待つのか―…

とりあえず、こんな暑い中、
外にいると気が狂いそうになるから
すぐに家に帰った。

そして4時ぐらいに、夕立が来た。
結構激しい雨だった。

その女の子は、
傘をもっていなかったことを思い出し、
傘を持って行くことにした。

その女の子は濡れながら、バス停にたっていた。


156 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:15:24.79
傘を渡すと、
「あれ、さっきいた子?」 と聞いてきた。
とても高い声で、そして弱弱しかった。

「さっきもいたけど、いつもおるんで」
「あぁ…5時10分らへんになると、たくさん小学生が来るわね」
「学校の校庭で、遊んでるんだ」
「そう。楽しそうね」
「楽しいよ」

しばらく、沈黙が続いた。
雨が叩きつける音が、響いていた。

「なぁ。ここにいっつもおるけど、何しちょんの?(何をしているの?)」

しまった、首を突っ込みすぎたか、と
ガキながら、冷や汗をかいた。

「ははは。お姉ちゃんはね、ある人を待ってるの」
「ある人って恋人とか?」
「秘密」

その女の子は、大きな目を細くして微笑んだ。
ガキの俺は、少しドキッとした。


157 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:19:30.68
胸のドキドキがヤバくなってきたので、
さっさと家に帰ろうとしたら、女の子が傘を返そうとした。
明日、返してくれればいい、と返事をして、急いで帰った。

次の日、やはりその女の子はいた。
俺を見つけると、大きな目を細くして、
微笑みながら手を小さく振ってくれた。

周りの友達はザワザワとなっていたので、
とても恥ずかしかった。

傘を受け取り、アイスを食べながら、
友達からすごい質問攻めにあったが無視をした。

チラッとその女の子を見ると、
やはり時計台とバス停の時刻表をせわしく見ていた。


158 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:28:54.28
そしていつも通りの日がまた何日か経った。
女の子は俺らと一緒に遊ぶようになった。
俺ら小学生に混じって、じゃんけん遊びやしりとりとか、
いろんな遊びを一緒にした。

女の子の名前は千穂。
見たことも聞いたこともなかったから、
最近よくある「カタカナ名前」か何かだろう、と思っていた。

ある日、家に帰って夕食を食べていると、
母さんがこんな愚痴をこぼした。

「うちの病院に困った人がいるのよー。
病室を抜け出しては遅くに帰ってきてなぁ。
どこで何しちょる(している)か知らんばってんが(けど)、
こげん暑い中、外に出ちょったら、責任とれんわぁ」

父さんは、 「ボケてるのか?大変だな」
「違うわよ、中学生の女の子でねぇ…。ガン(小児がんらしい)なんよ」
「へぇ。そりゃ困るなぁ」
「まぁ、先生(医者)もこりゃ治らんっち言いよるけん、
御両親も先生も、好きにさせりゃいい、とか言っちょるんよ」

母さんは病院の看護婦だった。
すぐ近くにある大きな病院だ。

千穂のことかな、と胸にグサッときた。


159 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:35:28.49
次の日。
いつも通り、チホ姉ちゃんはいた。

病院から抜け出す―…

母の愚痴が思い浮かんだ。
チホ姉ちゃんに、間違いない。
細い腕、細い脚、弱そうな感じは、いかにも病人らしかった。

その日、母さんにチホ姉ちゃんのことを言ってみた。
チホ姉ちゃんに間違いなかった。

俺は、チホ姉ちゃんが治らない病気になってることがショックだった。
その日はずいぶん泣いたと思う。

「死ぬ」っていうのはガキながらよく分かっていた。
じいちゃんが交通事故で即死したからだ。

あの悲しみが、じわじわと、胸に湧いていた。


160 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:39:00.25
次の日、
チホ姉ちゃんの姿はなかった。

「俺が母さんにチクったから…?」

と、心配になって、アイスも買わず、さっさと家に帰った。
当然、母さんは帰ってきてないので、病院に電話をかけてみた。

「今日、チホ姉ちゃん、おらんかったけど、どしたん?」
「んー、今日ねぇ、ちょっとお姉ちゃんは体を悪くしちょるんよ」
「大丈夫なん?」
「大丈夫よ。でも、お姉ちゃんと遊ぶのは、もうやめたらどうなの?」
「なして」
「なしてって、、、」

この日から、チホ姉ちゃんが外に出てくることはなかった。


161 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:44:30.69
夏休みが終わるぐらいに、
俺はチホ姉ちゃんのお見舞いに行くことにした。

母に連れられ、病室にいくと、とても痩せたチホ姉ちゃんがいた。
綺麗な黒髪も、今は何となくつややかさが消えていた。

チホ姉ちゃんは俺を見るなり、
大きい目を細くして、微笑んでくれた。

「珍しいお客さんね」
「体大丈夫?」
「大丈夫よ」

チホ姉ちゃんは、ベッドの机で何か手紙を書いていたのを、
俺から隠すように、裏にした。

「友達もみんな、チホ姉ちゃんが来なくなって寂しくなってさ」

ホントは俺が一番寂しかった。

「そっか。ごめんね。お姉ちゃん、体弱くて…」
「早く元気にならんといけんよ。待っちょる人がおるんやろ」
「そうね。元気にならんとね」

俺とチホ姉ちゃんは一日中、折り紙遊びやTVを見ながら過ごした。
次の日も、その次の日も、友達と遊ばずに、チホ姉ちゃんと過ごした。


162 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:47:29.27
夏休みが終わると、
平日の夕方か、日曜日しか、チホ姉ちゃんに会えなくなった。

チホ姉ちゃんの親にも会った。
弟ができたみたいね、と俺を可愛がってくれた。
母さんも、「お姉ちゃんができて良かったわねぇ」と言ってくれていた。

そんな日が、ずっと続くと思ってはいなかった。


163 :大人になった名無しさん:2011/07/20(水) 17:51:47.06
冬か、秋の終わりごろの土曜日だった思う。
俺は学校が終わるなり、すぐにチホ姉ちゃんに会いに行くのが日課だった。

いつも通り、いろんな話をしていると、
チホ姉ちゃんが口を押さえて、白いベッドを真っ赤にした。
吐血した。

チホ姉ちゃんは真っ赤に染まった手でナースコールを押し、
ベッドから転げ落ちた。

俺はどうすればいいのか分からなかった。
チホ姉ちゃん、チホ姉ちゃん、と泣き叫んでいたと思う。

すぐに看護婦がやってきて、色々と手当てをした。
俺は病室を追い出された。

廊下から、チホ姉ちゃんの血を吐く音、
うなる音、咳き込む音が聞こえて怖くなった俺は、
泣きながら家に走って帰った。


164 :大人になった名無しさん:2011/07/24(日) 23:34:33.02
続きお願い(>_<)

165 :大人になった名無しさん:2011/07/26(火) 21:10:49.20
続きめっちゃ気になるんだがwwwww
泣けてきた



166 :大人になった名無しさん:2011/07/31(日) 13:54:11.39
家に帰るなり、部屋にとじこもって泣きまくった。
夕飯も食べず、泣いて泣いて泣きまくった。
泣き疲れて、いつの間にか寝ていた。

起きたのは4時20分(時計を見たのをめちゃくちゃ覚えている)。
まだ暗かったが、玄関から物音が聞こえて起きた。
どうやら母さんらしく、俺の部屋に向かってくる足音が聞こえる。

母さんが俺の部屋のドアを開けた。
俺が起きているのに気づいて、目をカッと開いた。

「千穂ちゃん、死んじゃったわ…」

予期していた言葉だった。
とはいえ、全身をつらぬく言葉であった。

俺は返す言葉もなく、ただ押黙っていた。
母さんは静かにドアを閉めた。

チホ姉ちゃんは、もういないんだ―…


167 :大人になった名無しさん:2011/07/31(日) 13:54:56.63
次の日、チホ姉ちゃんの通夜があった。
俺は親戚でもなんでもないので、行くことはできなかった。
葬式は、母が俺が風邪をひいた、と嘘をついて、葬式に行かせてくれた。

棺桶からチホ姉ちゃんの顔を見た。
ホント、今にも起きそうな顔だった。
体を触ると、現実を思い知らされることを知っていたので、
触ることはできなかった。

チホ姉ちゃんの前では泣かない。
決めていた。


チホ姉ちゃんを焼き、骨壷にいれる時が来た。
お腹の部分の骨は全くなかった。
俺は震える手でチホ姉ちゃんをいれた。
変わり果てたチホ姉ちゃんを正視することすらできなかった。


168 :大人になった名無しさん:2011/07/31(日) 13:55:15.98 葬式が終わって数日後、
チホ姉ちゃんの母親から封筒がきた。
なんでも、チホ姉ちゃんが
俺に手紙を封筒の中に残してくれていたという。


ユウトくんへ。
これをよんでいるということは、私はついに死んじゃったのね。
私が死んでどれくらいたったかな?

"死ぬ"って言っても、消えるわけじゃないんだよ。
ユウトくんから見えないだけで、
お姉ちゃんはずっと、ユウトくんを見てるよ。

ほら、今、となりにいるでしょう。
いつもびょうしつに入ってくるときに言うように
「千穂姉ちゃん」ってよんでください。

私はあれを聞くのを、毎日楽しみにしていたよ。
今だって聞きたい。ユウトくん。

泣いてないよね?
元気あふれるユウトくんを見ていたいから。

おせわになりました。
楽しかった。
ありがとう。

10月12日
千穂姉ちゃんより。


169 :大人になった名無しさん:2011/07/31(日) 13:55:50.55
それと、
封筒の中に小さい封筒が一つあった。
手触りだがその封筒の仲には手紙が何枚かあった。

封筒には「私のたいせつなひとに書いたお手紙です。
見つけたらわたしてください」と裏にあった。

チホ姉ちゃんからは、その「たいせつなひと」の話を全く聞いていなかった。
当然、俺に預けたって無駄って分かっていただろう。
じゃぁ何で俺に頼んだんだろ、と思った。

いつかは、「たいせつなひと」について話すつもりだったのだろう。
それを話す前に、あっけなくチホ姉ちゃんは死んでしまったが。


170 :大人になった名無しさん:2011/07/31(日) 13:56:08.85
チホ姉ちゃんがあのバス停でずっと待っていたことを思い出した。
学校の帰りに、バス停に止まってバスから降りてくる人の中で
チホ姉ちゃんと同じ中学生くらいの男子を探した。

いつでも会えていいように、
ランドセルにはいつも封筒をいれていた。

あれから十数年。
結局、「たいせつなひと」に会えることはなかった。

家の大掃除をしていたら
タンスの中からあの封筒が出てきて思い出した、
チホ姉ちゃんとの不思議な夏の話でした。

その封筒は、まだ開けていない。



 
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