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ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)


****

世の中には女がいて、当然、男がいる。
ふたつの性は、出会い、惹かれ合い、すったもんだがあって、
なんらかの結論に集結する。
人はこれを懲りずに、ほとんど進化もなく繰り返している。

もしかしたら、
人生に恋愛などなくても少しも困らない人もいるだろう。
それはそれで構わないし、正直言えば羨ましいくらいだ。

恋愛が始まったころの、あの高揚感に包まれた至福の時間に比べて、
その後に延々と続く、じれったさややるせなさに費やすエネルギーの膨大さときたら。

まったくもって恋愛は割に合わない。
割に合わないと知っていながら、どういうわけか人はまた、
性懲りもなく恋愛に足を踏み入れてしまう。

時折、男は呟く。
「付き合っていた彼女、うまくいっていた頃は
天使かと思うくらい優しかったのに、
別れ話を持ち出したとたん、悪魔のように恐ろしい女になった」

それに驚いているのは、男ばかりじゃなく、
女の方も、そんな自分に驚いているはずだ。

時折、女は呟く。
「私が死ぬ方が楽なのか、彼に死んでもらう方が楽なのか」



生まれて初めて読んだ恋愛小説は、
たぶん『人魚姫』ではなかったかと思う。

恋した男のためにすべてを捨て、最後は、
その思いさえ伝えられぬまま海の泡となって消えてゆく。

考えてみれば、その時に、恋愛とは割に合わないものだと知ったように思う。
かつては、人魚姫の無垢で一途な想いに心打たれた。
少し物事を斜めから見るようになってからは、
何の手も打てずに終わった人魚姫の愚かさを嘲いたくなった。

いつか年を重ね、人魚姫をどうにかして思い留まらせようとした
姉たちの必死な説得に頷く自分がいて、やがて、
「馬鹿な子だね」と、人魚姫に魔薬を手渡す、海の底に暮らす魔女が
本当は何を言いたかったのか、思いを馳せるようになっていた。

私の中には、人形姫もいれば、魔女もいる。
その矛盾に、私は少しも不都合も不便も感じない。


***

上記は、唯川恵さんおエッセイからの抜粋です。
ジョゼをDVDであらためて見直して、この文章がまさに
この映画のことを表しているんじゃないかとおもいました。

2004時の感想
■私のこの映画の感想

この映画の肝はセックスです。

唐突なくらいに出てきます。
でもそれがジョゼにとっての虎だったのです。
セックスは生きる源です。
彼女にとって最も怖いもの(虎)とは、生きることを認識することでした。

セックスはジョゼに生をあたえました。
本物の虎をみながら、ジョゼは恒夫に「感謝しろよ」と言います。
それは、恒夫にとってジョゼが性の対象だからです。

ジョゼは男の本質を鋭く見抜きます。
恒夫にとってジョゼは、倒錯した性欲の対象でもありました。
タンスの中にあったSM雑誌がそれを暗示しています。

一見池脇千鶴ちゃんが無駄に脱いでいる感じがしますが、
そういう肝を表現したいがためにあえておっぱいをみせているのです。(多分)


また男と女、そしてどういう恋愛をしてきたかで、
この映画の見方が随分違うのだろうなとも思いました。

愛は時として勘違いから始まることもある。
勘違いが愛に変わることもある。
この映画に描かれた(一見障害者の特別な)恋愛・出会いと別れは、
我々の普通の恋愛となんら変わりはないのです。


「彼はあなたを愛さなくなるだろう。
あなたは彼を愛さなくなるだろう。
そこには一年という年月が経ったという現実だけが残る。」
by サガン


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